エクステリアは住宅のテイストに合わせて計画して造っていきたいと思うのは当然のこと。エクステリアにおいては、モダンテイストの住宅はやはり根強い人気があります。そんな中でもここ数年では、和風庭園とまではいかなくとも、凛として落ち着いた和のテイストを取り入れた庭造りをしたいという方が増えてきている印象です。和モダンの庭づくりには、それに合った植物やアイテム選びがポイント。今回は、そんな「和風・和モダン」のお庭造りにおすすめな植物を中心に、人気の和モダンに合うシンボルツリーや下草の選び方などをご紹介していきます。
もくじ
和モダンテイストの住宅とお庭
和モダンデザインが人気
現代のライフスタイルに合ったモダンデザインの住宅は、近年でも確実に増加傾向に。一方で、工業的な素材が用いられることも多いモダン住宅は、比較的に冷たいイメージになりがちです。そこで、同じく和モダンテイストを取り入れた住宅にも注目が集まっています。
和モダンテイストの住宅は、現代和風という意味合いで自然を抽象化したデザイン。時に東山慈照寺の向月台や東福寺本坊庭園の市松模様のような単純な形や直線的なデザインが現れる日本庭園。そして、伝統的な和の庭園の中にもモダンに見えるものがあるように、和のデザインはモダンテイストと非常に相性が良いのです。
単純に「和モダン」といっても、和の取り入れ方には様々な種類があります。例えば、簡素な「間」の中に凝縮された日本の美しい自然の風景をつくるのも和モダン、伝統的な和の空間をモダンな要素で置き換える和モダン、逆にミニマムな空間にポンと伝統的な和の要素を加えるのも和モダン。さわやかな和モダン、重厚な和モダン。和モダンは住宅のデザインに合わせたり、好みに応じて取り入れていくことができるのです。
和モダンな坪庭や中庭がある住宅デザインは現代でも根強い人気があります。小さな中庭でもシンプルな和モダンにすれば、エクステリアやインテリアのイメージを邪魔することなく、緑・自然をより身近に見ることができ季節を感じられます。
例えば2×2メートルの壁やガラス窓に囲まれた中庭なら、日陰向きの和風の樹木や下草を植栽し、地面には砂利や自然石を敷けば和モダンな坪庭に。たくさん植えすぎないのもポイント。高木や低木なら1本で、下草も低いものを選び「間」を生かすようにデザインします。採光や通風の良さもメリットのひとつです。
和風庭園と和モダンの違い
先述した通り、和風庭園とは、古くからある日本の伝統的な庭園のことをいいます。
基本的なスタイルは、池を中心にして土地の起伏を生かしたり、築山を築いて自然石の庭石や草木を配したりといった、四季の変化を鑑賞できる景色を造るのが一般的。
京都のお寺の庭や各地にある日本庭園を想像したり、里山を表現した坪庭をイメージしたりしてみると分かりやすいかもしれません。
一方、和モダンとは現代和風のことを言います。
伝統の和風庭園の良さを活かしながらも、現代の住まいに合わせて新しいエッセンスを組み合わせるのがポイント。一般的に、現代の住宅は純和風のものが少なく、フローリングやドア、カーテンなど現代人の生活により便利で使いやすい西洋のスタイルが多く取り入れられています。和モダンも和風庭園の良さを残しつつ、現代住宅に合わせて新しいデザインを融合させることで、現代の住宅にマッチしたオシャレな空間を実現した庭といえるのです。
和モダンデザインに合う植物
和モダンのお庭にはどんな植物を選ぶべき?
一般的にシンプルでスッキリと仕上げられることの多い和モダンテイストのお庭。低木類も曲線的な起伏を持つ刈り込みではなく、直線・整形的に仕上げるとよりモダンになります。そんな和モダンに合うのは…高木はアオダモ、ハウチワカエデ、ゴヨウマツなどが代表的。基本的に和風庭園によく使われる植木は和モダンな空間にマッチします。赤松、黒松、五葉松のどっしりとした仕立物なら力強い和モダンに。例えばコンクリート住宅のフロントガーデンに一本だけ樹木を植栽して重厚さを表現したい場合、松の仕立物が向いています。立派な門かぶりの松もモダンに再利用できるのです。
また、和モダンの庭には、ほっそりした幹が美しく林のような出で立ちの株立ちの木に、すっきりした形の葉を持つ低木や下草などを組み合わせてみるといいでしょう。
株立ちの樹木には、常緑樹なら、ソヨゴ、シラカシ、落葉樹なら紅葉の美しいイロハモミジ、ヒメシャラ、花や実も楽しめるヤマボウシ、野趣のある樹形が美しいアオダモやエゴノキなどがあります。
落葉樹は薄い葉から春の光が透ける新緑が繊細で、秋の紅葉などもあり四季を感じやすい樹種。常緑樹は1年中緑が楽しめるという利点があり、秋に大量の落ち葉に悩まされることも少なく、庭の手入れに時間を掛けるのが難しい人にもおすすめ。可能であれば、どちらか一方だけを植えるのではなく、庭のデザインにうまく両方を組み合わせてみるとバランスのとれた庭になるでしょう。また、庭に1本立ちの木をほどよく取り入れると、そのインパクトのある立ち姿がデザインを引き締めてくれることもあります。
和モダンにおすすめのシンボルツリー
季節感を楽しみたい、自然の良さをだしたいなら落葉樹がおすすめ。一般的な日本の木造住宅にも似合いやすく、無難な選択といえます。イロハモミジ、ハウチワカエデ等のカエデ類は和モダンの代表選手。切れ込みの入った繊細な形の葉が美しく、新緑、緑陰、紅葉と季節の変化を楽しめるでしょう。花が咲くものならヒメシャラ、ヤマボウシ、エゴノキなどの株立ちの樹木に人気があります。
株立ちの常緑広葉樹ならいつも緑を楽しむことが可能に。半日陰でも育ち成長のより遅いソヨゴ、ハイノキなどを選ぶと、スモールスペースで常に整ったイメージを保つことができます。
和モダンに取り入れたい下草や低木は細長い葉を持つものがいいでしょう。細葉のヒイラギナンテンも人気があり良く取り入れられています。背の低い植物で地面をカバーするなら、笹類、フッキソウ、タマリュウを。一面に群植して緑のカーペットにしても良いですし、樹木の下草としても活躍します。花が咲く下草が欲しい場合も、和風の素材がおすすめです。下草なら、ヤブラン、リュウノヒゲ、セキショウなどがあります。また、駐車場の目地としてよく使われるタマリュウを植えてみるのもいいでしょう。これらの下草は、シダやフッキソウ、ギボウシなど葉の形の違う植物と合わせて植えることで、より変化に富んだ趣のある庭になります。
和モダンに合うマテリアル
和モダンにあうアイテムには樹木のほかにもさまざまなものがあり、みかげ石、大谷石、砂利などの石もそのひとつ。みかげ石はグレーやさび色といったシックの色合いで、質感もざらざらしたタイプのものも非常に相性が良いです。敷石や飛び石として使うと、目立ちすぎず、それでいて植物を引き立ててくれるので、和モダンを演出するのにぴったり。みかげ石には1辺が9センチメートルほどのサイコロ型をしたピンコロというタイプがあり、飛び石だけでなく花壇の縁取りや敷材として使うこともできます。
大谷石は、青みを帯びた色から、白っぽい色、茶褐色などと幅のある色合いに、茶色の斑点が特徴的な石。下草との相性が良く、落ち着いた趣を演出することができます。また、砂利はその形状や色の種類が豊富で、サビ砂利やビリ砂利、黒い玉石などいろいろなものがあるのです。直径5センチメートル以上の砂利やゴロタ石などを使うとより和モダンにマッチするでしょう。
趣のある和テイストのお庭
日本の美を取り入れた和モダンの庭で重要なのは、シンプルであるということ。和風庭園の美しさは、余計なものを排除し、すっきりとした景色の中にも四季を感じる要素を取り入れるところにあります。
そのことから、和モダンの庭を設計する際にはあまりたくさんのアイテムを植えたり、置いたりしすぎないことが大切。そうすることで、和の趣が感じられる現代風の庭を演出することができるでしょう。
そして、和モダンの良さは伝統に縛られないことでもあります。和モダンを演出するアイテムも、植物や石だけでなく、洋風のシックな風合いのランタンや枕木、レンガなどを取り入れ、アイディアを生かした自分だけの和モダンに挑戦してみてはいかがでしょうか。また、植物を取り入れた庭づくりにはその後の管理が不可欠。年間の定期的な作業なども考慮して自分のスタイルに合った庭づくりをして、和モダンを楽しんでみましょう。